飾り方
ひな人形を飾る時期は、地域によって差はあるようですが、とくに決まったルールはありません。早すぎず遅すぎずということを考えれば、2月の初めに飾りつけ、3月半ば過ぎに片づけられてはいかがでしょう。せっかくのひな祭りですから、できれば長く飾って春の季節を楽しみたいものですね。
湿気のある場所や直射日光の当たる場所には飾らないようにしましょう。衣裳が変色したり、傷んだりする原因になります。
人形を取り扱うときには、手袋をはめて手や指の脂が顔や金属の小物などにつかないように気をつけましょう。
人形の入っていた箱や袋は、しまうときに必要になります。なくさないように気をつけましょう。説明書や取扱い書なども大切に保存してください。


日常のお手入れ
人形の顔についたほこりは、息を吹きかけてはらえば大丈夫です。衣裳の筋にたまったほこりは、羽毛ばたきや小筆を使ってはらうようにしましょう。人形が載っている台は、布やクロスで拭いてください。


しまい方
ひな人形を飾るのは、1年のうち1〜2ヵ月。ほとんどの期間は箱の中におさめているわけですから、しまい方や保管のし方にも気をつかいましょう。ひな人形をていねいに扱うことは、毎年のひな祭りを楽しむコツでもあるのです。
よく晴れた空気の乾燥した日を選び、一度風にあててから羽根ばたきや小筆など使って人形のほこりをていねいに払いましょう。
やわらかい薄紙で人形の顔をおおい、手も薄紙で包んでからひとつずつ袋に入れて箱におさめます。箱の中のあいたところには新聞紙などをつめましょう。
市販されている人形専用の防虫剤を、人形にじかに触れないように箱の隅に適量入れておきましょう。
押入れの上段や天袋など、湿気のない高いところに保存しましょう。できれば十月頃に一度陰干しをすることをおすすめします。


ひな祭りの起源
ひな祭りの歴史は古く、その起源は平安時代にまでさかのぼります。もっとも当時は、いまのように華やなお祭りではありませんでした。
当時、上巳の節句といって子どもの無病息災を願ってお祓いをする「流しひな」という行事が行われるようになりました。これは、ワラや紙でつくった人形(ひとがた)に災いや凶事を託し、川や海に流すというものです。
おなじ頃、宮廷では源氏物語や枕草子に出てくる「ひいな遊び」という遊びがありました。「ひいな」というのは、「小さくてかわいいもの」という意味。紙でつくった人形と身のまわりの道具をまねた玩具を使う、いわば「ままごと遊び」のような遊びです。
こうした行事や遊びが時代とともに変化し、いまのひな祭りになったのです。


おひなさまの起源
ひな祭りは、流し雛など穢れを祓う行事から、ひな人形を飾る行事へと次第に変化していきました。婚礼道具の中に、男女の内裏雛を入れ、飾り物は婚礼道具をまねたものになっていきました。
江戸時代、大名の家では結婚後の初節句に内裏雛を飾ったり、娘が生まれるとひな人形を贈って祝うようになりました。江戸の中期になると、女の子の初節句を祝う行事としてひな祭りは広く一般へと広がっていきます。紙でつくった立ち姿のおひなさまは次第に豪華になり、江戸の後期になるといまの雛壇のスタイルができあがったといわれています。
時代とともに姿を変えたひな人形ですが、女の子の健やかな成長を願うという想いは、ずっと受け継がれてきたのです。